インナーヒルズの愉快で心がはずむ旅行記

写真と動画による旅行先での非日常的体験の記録

れんじ窓とデバター像

 遺跡のいわゆる本殿と言われてる所は、最も外側を「第一回廊」という城壁のような四角い回廊で囲まれていて、その内側を「第二回廊」で囲まれています。これらの二重の回廊で囲まれたさらに内側に「第三回廊」と一体になった「中央祠堂」があります。

 見事なレリーフがあることで有名なのが「第一回廊」です。観光客用に造られた木造の階段を登って回廊に上がります。

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 「アンコールワット」は元々ヒンドゥー教の寺院として創建されたものが、後の世に仏教寺院として使われるようになった寺院です。
レリーフの題材としては、ヒンドゥー教の伝説や古代の戦いの様子や勧善懲悪の戒めとしての天国と地獄の様子などが刻まれいます。

 回廊の壁面には途切れることなくレリーフが刻まれています。レリーフの前にはロープが張られていて観光客が直接レリーフに触ることは禁止されていますが、以前は禁止されていなかったようで、レリーフを見ると観光客が触った部分だけが、てかてかに黒光りしていました。

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 「第一回廊」と「第二回廊」の間の「十字回廊」と呼ばれる所には「沐浴池(もくよくいけ)」があります。今は干上がっていますが、当時僧侶が沐浴に入る時に使ったであろう階段がそのまま残っています。

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 祭壇が作られている箇所もあり、祭壇の前には実際に僧侶が居て、観光客が僧侶の前に座って手を合わせるとお経を唱えてお祓いしてくれます。

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 回廊のあらゆる箇所で見かけるのは、窓の内側に飾り棒を並べたいわゆる「連子窓(れんじまど)」と女官や踊り子たちをモデルにして彫られたデバター像のレリーフで、これらが「アンコールワット」における一貫したデザインとなっています。

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 回廊を歩いてゆくと何やら墨で汚れた柱があり、よく見ると「日本」という文字が確認できます。(写真の赤丸で囲んだ部分です。)

 これは江戸時代に森本右近太夫一房(もりもとうこんだゆうかずふさ)という日本人が書き残した有名な落書きなのだそうです。

 彼は「アンコールワット」の事をインドの「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」*1だと勘違いしていたそうですが、情報のない時代に「アンコールワット」の立派な外観を見れば勘違いするのも無理はないと思います。「日本」以外の文字はよく判別できませんでした。

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 「第二回廊」を通過して「中央祠堂」を下から見上げると、あたらめてその高さを実感できます。聳え立つ山といった感じです。

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 ここに上がるためには観光客用に造られた木造の長い階段を登っていくことになります。「中央祠堂」は神聖な所なので帽子は脱がなければならず、女性はノースリーブの服装では入れません。

 階段は登りと下りとで一方通行になっており、手すりが付いているとは言え、かなり急な階段です。登り切ってから下を見下ろすと、あまりの高さに恐怖を感じます。

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 階段の上にある「第三回廊」を歩いてぐるっと一周することにします。回廊には所々に仏像が置かれており回廊の外側は連子窓になっていて外の景色を見ることができます。上から見ると「第一回廊」と「第二回廊」が二重に取り囲んでいる様子がよく判ります。

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 内側の「中央祠堂」へは4本の通路で繋がっていて、それぞれの通路の奥には仏像が祀られていました。

 「第三回廊」と「中央祠堂」だけでこれだけの大きさがあるのですから、「アンコールワット」全体の規模の大きさにはあらためて驚かされます。もし700年前の当時に訪れていたら、さぞかし圧倒されたことでしょう。

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 「中央祠堂」を降り再度「第一回廊」に戻り、最も有名な題材である「乳海撹拌(にゅうかいかくはん)」のレリーフを見にいきます。

 不死の霊薬「アムリタ」を得るために、マンダラ山の撹拌棒に蛇の神「ナーガ」を巻き付けて神々と悪魔が綱引きをすることで大海を撹拌した結果、この世が生まれたという伝説です。

 中央に刻まれているのが、ヒンドゥー教で最高神とされるヴィシュヌ神です。レリーフは彫りが深く人間の体の曲面もなめらかに表現できていて、すばらしい出来栄えです。総延長700m以上もある「第一回廊」に、これだけ手の込んだレリーフを刻むのはさぞかし大変だったことでしょう。

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 「アンコールワット」遺跡は規模が大きく、ツアーでの観光は短時間なのでその全てを見ることはできませんでした。「第一回廊」のレリーフだって全周は見ていません。じっくり見るためには個人旅行で来て、「アンコールワット」遺跡の観光だけで数日間を要して見る必要がありそうです。

 遺跡を出て記念写真を撮影した後は、一旦ホテルに戻り遅い朝食をとることにします。

   

*1:釈迦が説法を行ったとされるインドにある寺院。仏教の聖地の一つで、日本では「平家物語」の「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。」という冒頭の言葉で有名です。